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育児と仕事なかんじ

まとめ1-1 営業保険料

CBTにむけたアウトプット練習・教科書網羅チェック・疑問のあぶり出し

 

1.1 純保険料と営業保険料

純保険料とは、保険料のうち約款に規定される保険給付の支払のための対価となる部分の金額。

将来の支払の発生確率となる予定死亡率・利息割引効果を決定する予定利率などの予定基礎率は単に将来の基礎率を予測したものではなく、将来のいかなる変動に対しても保険料追徴を行わないための余裕をも含んだ保証基礎率として設定されるべきである。

営業保険料とは、純保険料に対して付加保険料を加算したもの。加入者目線の保険料にほかならない。

日本においては付加保険料として事業費、すなわち一般の事業会社における営業費用のみを加えるのが通例であるが、外国においては営業利益、契約者配当財源などより広い用途で付加保険料が活用されている例もある。

 

1.2 営業保険料決定の際に考慮すべきこと

営業保険料を決定する際の注意点は主に4つ:

(i)十分性

将来の保険給付を賄うのに十分な水準の保険料が徴収されること。

(ii)公平性

実務の簡素化を念頭に置きつつ、契約者ごとの異なる属性に応じて公平性が担保された保険料を設定すること。→1.8 保険技術的公平性

(iii)収益性

?収益は高ければ高いほどいい?

収益性検証→第10章

(iv)標準責任準備金との関係

十分性を検討したうえで低廉な営業保険料を設定する場合、基礎率の違いによる積立負担に留意すること。

?死亡率と利率、どちらを犠牲にする方が積立負担が大きいか?

?積立負担をその保険群団で賄えるようにするための工夫は?

?初期の積立負担が大きいことは将来収益が大きいことと相関がある?

 

1.3-1.4 営業保険料の要素の設定・監督

(i)死亡率

(KEY:経験死亡率/安全割増/選択効果/商品設計に由来する検討事項/標準生命表

基礎率設定のベースとなる経験死亡率は低下傾向にある。今後も死因別や感染症による死亡率の変化に注意を払う。

死亡給付と生存給付では死亡率安全割増の方向が異なる。生死混合保険(≒養老保険)や第三分野保険では、死亡給付要素と生存給付要素の大小を勘案して安全割増の方向を決定する。年金開始前後においても同様。

保険加入時の危険選択により加入後一定期間の死亡率が低くなることを選択効果という。選択効果を保険料基礎率に織り込む場合、十分性への配慮も欠かせない。

商品設計によっては将来の発生率に特別の配慮を要する場合がある。リスク濃縮など。

?死亡率は保険加入者の制御外であるから、ギャンブルリスクはない?

監督は発売時の算出方法書認可にて行われる。

(ii)利率

予定利率は実際の運用方針・配当方針をベースとして、保守的に低めの運用利率を見込むことが原則であるが、近年の超低金利環境を鑑みると、ただ低めにするにとどまらず商品設計により異なる金利上昇リスクを積極的にコントロールするべきである。予定利率変動型・ビルトイン方式も考案された。

監督は発売時の算出方法書認可にて行われる。

(iii)事業費率

日本においてはそのまま事業費を指すことがほとんどである。事業費は大別して3つ(新契約費/維持費/集金費)

監督は事後モニタリングにて行われる。

 

1.5 付加保険料方式の考え方、変遷

4つの観点がある。

(i)十分性

事業費はその群団の中で完結する水準に設定されること。さもないと他の群団の余剰から賄うことになり群団間の公平性の問題が生ずる。

(ii)普遍性・公平性

ひとつの算出方式で多くの保険種類の付加保険料を矛盾なく規定するのが普遍性。

保険種類間でみて事業費の水準が合理的に保たれているのが公平性。

(iii)費用主義・効用主義

販売者の立場から、実際に要する経費の大きさを賦課するアプローチが費用主義。合理的な按分測定が問題。

購入者の立場から、保険商品により享受する「保障効用」「貯蓄効用」の大きさを賦課するアプローチが効用主義。効用とは何か、いかなる指標をもって測定するかが問題。

(iv)簡明性・実行可能性

過度に煩雑な計算式は避けるべきである。

 

付加保険料方式の変遷

19c初頭まで:implicitあるいはexplicitに漠然とした割増を行うのみ。

19c中頃から:純P比例、S比例から始まり、営業P比例も登場した(スプレーグ)。

現在:α-β-γ式が普遍性・簡明性・費用主義効用主義・収益管理の容易性・配当率設定の容易性から主流となったが、各パラメータのドライバーについては引き続き様々な修正が考案されている。

 

補足:解約返戻金と付加保険料の関係

解約返戻金とは「保険会社に払い込まれた保険料のうち、一部は年々の死亡保険金支払いに予定される金額、またほかの一部は契約の締結及び維持に必要な経費に予定される金額にそれぞれ充てられ、これらを差し引いた額の累計額を基準に定められた金額を解約の際の返戻金として支払う」と説明されている(根拠はどこ?

すなわち給付内容を固定して考えれば事業費として支出する金額と解約返戻金は表裏一体の関係にあり、解約返戻金割合が高い保険商品を開発することは保険会社にとって経営の効率化を強いるものである。

 

1.6 営業保険料の計算

日本国内における計算方法の変遷は

昭和56年3月まで:年払保険料を基準として

×0.52、×1/11により半年払、月払Pを算出。団体料率は利息分の割り増しなし

昭和56年4月から:月払い保険料を基準として

×11.3、×5.8により年払、半年払Pを算出。団体料率も真保険料となった。

 

1.7 アメリカ・イギリスにおける営業保険料の計算方法

第3章も参考のこと。

 

1.8 保険料をめぐる議論

生命保険マーケットは絶えず変化に曝される。

需要の変化:死亡保障は飽和、生存保障と第三分野が成長中

供給の変化:料率の競争激化、チャネルの多様性

これを受けて各社とも保険料率設定に技巧を凝らさざるをえないが、その中で保険会社としての社会的信頼性を保つため、保険料率の公平性・妥当性を慎重に検討しなければならない。

 

保険料率の細分における留意点(保険技術的公平性)

1.2で既出であるが、保険、とくに公的保険に対して私保険(民間保険)は強制加入でなく、不特定多数の者が自発的な意思により加入するものだから、保険料率の公平性が保たれなければ制度維持がままならない。この考え方を保険技術的公平性という。

より厳密に述べると、同一の保険給付を約した被保険者群団を区分してそれぞれ異なる保険料率を適用するとき、それぞれの区分の群団のリスクは同質であり安定であるという要請である。例として非喫煙者料率の導入。

しかし現実にリスクの同質化・安定化を完全に達成できないのはもちろんのこと、リスクの同質化を追求しすぎるあまり高リスクな集団に対して負担能力を超えた保険料率を提示してしまえば、「社会的公平性」を欠いていると評価されてしまう。保険技術的公平性を重視してリスクに応じた保険料を請求すべきか、社会的公平性を重視して広く加入しやすい保険料とすべきかはその社会の声に従うべき。例えば公的保険が完備されていないアメリカでは、私保険が社会保険の役割を担っている側面があり、そこでは社会的公平性がより強く求められるような調査結果もある。

 

保険料率を細分する場合、その留意すべき要件として8つある。

なお細分にあたって一区分当たりの被保険者数が大数の法則を適用できないほど少なくなる場合、損保数理における信頼性理論を生保数理にも導入する余地がある。

(i)同質性

区分後の各群団は同質性を有するように区分したか。当たり前の要件。

(ii)分離の必然性

有意にリスク差がある区分となったか。

(iii)測定可能性

区分のためのデータが、信頼できるレベルで、実務範囲内の負荷や費用を以て得られるか。

(iv)定義明確性

契約当事者双方が納得できる、客観的な条件であるか。

(v)将来予測可能性

保険期間が長期に亘る場合、保険加入時点から消滅時点までの当該区分条件の変遷を予測して保険料率に反映できるか。

(vi)危険減少インセンティブ

危険の少ない群団を優遇する仕組みになっており、被保険者のモラルリスクを惹起しないこと。

(vii)制御可能性

区分に使用する属性は被保険者が制御できるものであること。

※日本では社会的コンセンサスに本要件が取り上げられることは少ないが、諸外国では性別や先天的な情報を保険料率に組み入れることに否定的な意見が多いようである。

(viii)社会的容認性

最も包括的な要件である。社会によって、何が受け入れられるかは異なる。